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2012/05/21(Mon)

大人のバー

昭和33年8月15日、松山に一軒のバーが誕生した。バー露口。主の露口貴雄さんは徳島県出身。18歳の時に大阪のサントリーバーに就職。岩崎師匠(故人)のもとでバーテンダーとしての腕を磨いた。終戦から10年余り、人々の生活は落ち着きを取り戻し始めていた。ほんの少し、贅沢を嗜もうという風潮の中で、洋酒を提供するトリスバーがブームとなっていた。技術のあるバーテンダーは全国から引く手あまた。貴雄さんのもとにも、オファーが殺到する。そんな中から故郷に近い、愛媛県松山市のトリスバーから声をかけられ、1年契約で務めた。契約満了後、貴雄さんは自らの名前を冠した店を開いた。

開業から半世紀を超えた。「露口」の中だけは昭和がそのまま立ち止まっている。長身痩躯、ホワイトシャツに蝶ネクタイの貴雄さんは、寡黙なのに、時々ひねりの効いた一言を発する。その傍らには終始賑やか、明るい笑い声を響かせる奥様の朝子さんが立っている。この二人のコンビネーションが絶妙で、熟練の夫婦漫才を聞いているようだ。

「露口」の看板メニューは、8オンスのタンブラーで供するハイボール。最近、ちまたではハイボール流行りだが、ブームとは関係ない。昭和33年の開業時より、「露口」の口開けの一杯はハイボールに決まっている。角と氷と炭酸。極めてシンプルな酒だが、貴雄さんのステアが魔法の味わいを醸し出す。爽やかで豊か。軽やかで印象的。もちろん締めのいっぱいも、またハイボールなのだ。

役者に作家にアーティスト、著名な財界人の中に「松山に来たら露口」という人は多い。どんな有名人でも、シガーホールのあるカウンターに向かい、グラスを傾ける時には一人の客としてもてなす。そんな潔い姿にも、グッとハートを鷲掴みされる。

この店を知っていることは私の自慢であり、この店で過ごす時間は私の宝物だ。ぐでんぐでんに酔った時には足を向けない。さあ、これから飲むぞと背筋の伸びた時。一次会と二次会の間のつなぎ。あるいは、家に帰る前にもういっぱいひっかけようか。そんな訪ね方がちょうど良い。長居は御法度。なぜならこのカウンターに座るのを楽しみに町を徘徊しているファンは多い。皆で共有する店なのだ。

時には満席ですごすごと引き返す夜もある。そんな日は、古ぼけて来た店を眺める。少しだけ満足する。

◎バー露口
松山市二番町2-1-4
089-921-5634
19:00~24:00
日曜・祝日休
ハイボール700円、カクテル900円~
※この店にはビールは置いていません。それが露口さんのスタイルです。
露口

写真・國貞誠 デザイン・藤原貴 コピー・阿部美岐子
マツヤマワンコインアートプロジェクト ポストカード¥100
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コメント ▼


    
  • ラブレターですね

    露口という存在を愛してやまない、阿部さんのラブレターのようなエッセイ。大好きな店が、こんな純粋な愛をもって描かれている。私も幸せな気分になりました。

  • なかも編集長、ありがとう!

    コメント嬉しいです。へへ、とはいえぐでんぐでんで行ったりしますけどね(笑)。今日、杉浦さんの陶展に行ってきました。そしてあのボウル、買ってしまいました(ワハハ)。あまから手帖の取材でお知り合いになれて、本当によかったです。目下、ロカンダに飲みにいく計画をひっそりと練っています。

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